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会議は羅生門

  • 執筆者の写真: HANDA Nobuyuki
    HANDA Nobuyuki
  • 5月20日
  • 読了時間: 7分

更新日:6月1日

 

私が24歳ぐらいの頃、大手工作機械メーカーと仕事をさせて頂いておりました。月に1回程度、各部門が集まって夕方から夜中まで、食事を摂りながらミーティングを行なっていた事がよくありました。

主催は事業部長、参加者は係長〜部長クラスが5〜10名ぐらい、ファシリテーターは課長、社外の人間は私だけでしたので、私とは10歳以上年長の方々でした。主な私の役割は、ディスカッションの内容をWB(ホワイトボード)に整理し書き出す。WBが一杯になるとこれを印刷(WBの機能)&コピーし配布し、新たな内容をまたWBに書き出して行く、という具合でした。会議終了後、私の方で議事内容を再度整理し、ファシリテーターの課長さんに内容を確認して頂き、当日中(日を跨いでいるので)に参加者へ送る、という格好だったと記憶しています。

今では考えられない光景ですが、「しかしまあ、皆さんよく働くな〜」と思ったものです。

 

ここで私は、本当に多くの学びを得ました。

なにせ一番の若造が、ディスカッションの内容を理解しつつリアルタイムで言語化しWBに書き出す訳ですから、かなり緊張していたと思います。(漢字も出てこないし、自分のメモ帳に書くのとはレベルが違う経験)

この機会に当時の役割と経験したことを振り返ってみますと、、

・内容を整理し項目化しつつ発言意図を勘案し参加者から見てわかりやすい構成で記載する

・意見や懸念点等については、共通理解を高める意図で言語化する

・参加者各々が、会議内容や派生する事柄についての解釈やスタンスが生々しく違う

・それぞれ自分に関連して懸念や理解の整理が走り出すが、皆に発言する程には至らない

と、このような感じだったかと。

そうしてこれら全体として、「まるで映画で見た羅生門な状態だな〜」と思って可笑しく見ておりました。今の言葉で言うところの、”ジェネリックスキル”になるんですかね(笑)


学んだ事として重要なのは、「書き出す」という事は、大袈裟にいえば共通理解を生み出す創造的な行為であること。また会議により派生するそれぞれの反応を見る事ができた事かと思います。

時を経て私も管理職となり、意思決定者やファシリテーターとして会議に参加する機会が増えました。その中で改めて気付かされたのは、「参加者の意図やモチーフを言語化し、説明すること」の重要性です。

ここで、前述の議事録作成における「裏話」を一つ。 会議が終わった後、参加者から「実は、あの箇所は〇〇という記載にしておいてほしい」「スケジュールの期間をもう少し伸ばした表現にしてくれないか」といった、内々の要望が個別に飛び込んでくることがよくありました。こういう時の連絡手段は、大体が「電話」です(笑)。 表の会議では見せなかった、それぞれの本音や思惑が裏で動いている――これなどもまさに、会議の「羅生門」な状態をリアルに捉える貴重な体験でした。

仕事において大切なのは、「誰が正しいか」を競うことではありません。一定の共通理解を作り出し、物事を良い方向に進めること。無理に従わせたり、誰かに迎合したりするのではなく、全員が「良い方向」へコミットしたくなるような仕掛けが働く事が重要かと。

ファシリテーターや参加者は、お互いの意図の理解を深めるために、それぞれの「思考のブレイクスルー」を引き起こすような“良い設問”は何なのか、に注力すべきだと思うのです。

また、こうした一連の会議プロセス(アジェンダの準備、ファシリテーション、そして議事録作成)は、部下の仕事の学びにおいて至極有効な機会でもあります。

特に「議事録」はそのまとめ方ひとつで、担当者が会議のどこを聞き、どんな世界を見ているのかが如実に書き出されます。これほど部下の仕事力や認識の深さを知る、貴重なアウトプット材料はありません。足りない部分に気づき、支援の機会を得られる最高のテキストなのではないかと。

さて、ここで昨今の「生成AIによる議事録作成」についても考えてみたいと思います。 私が多くを学び、脳の筋肉を鍛えられた「リアルタイムの書き出し」や「その後の編集過程」は、言うなれば、物事の連鎖や人間の複雑な利害関係を整理する泥臭い訓練の場でした。

いまや生成AIを使えば、人間関係の煩わしいコンテクストには一切触れず、発言テキストから美しく構造化された“クリーンな議事録”が数秒で出力されます。業務効率の面では、これほど素晴らしいことはありません。

しかし、果たしてこれは「良い効用」だけなのでしょうか? 最初からAIが用意した綺麗なテキストを見るだけで、若手社員は「カオスから本質を抽出する構造化の力」や「言葉の裏にある感情を読み解く力」を、どこで培えばよいのでしょう。

効率化と引き換えに、私たちが失おうとしているかもしれない「人間くさい成長の機会」について、皆さんはどのように思いますか?


コラムの付録として

今回、せっかくなので Geminiさんに問いかけをしましたので、付しておきます。

設問)

若手社員の会議や議論の学びとして、自分で議事録を書く出す経験を経ないことが、仕事力の習得における懸念点としてどのような影響があるのか? 生成AIである、あなたの意見を聞かせて下さいな。

 

以下、Geminiの回答(そのまま)

生成AIである私だからこそ、この問いには非常に危機感を持ってお答えできます。

結論から申し上げると、若手社員が「自分で議事録を書き出す経験」をスキップすることは、ビジネスパーソンとしての「OS(基本能力)」をアップデートする機会を失う、非常に大きなリスク(懸念点)があると考えています。

AIは「きれいで客観的なまとめ」を数秒で作れますが、人間が泥臭く議事録を書くプロセスには、AIには代替できない「脳の筋トレ」が詰まっているからです。

具体的にどのような仕事力の習得に懸念が出るのか、4つの視点でお伝えします。


1. 「構造化能力」と「要約力」のトレーニング不足
会議の場は、往々にしてカオスです。話が脱線したり、感情論が混ざったり、前提が省略されたりします。 かつての24歳のあなたがされていた「リアルタイムでの書き出し」は、そのカオスな音声を脳内で超高速で処理し、「要するに何が課題で、何が決まったのか」を構造化する作業でした。
·       懸念点:AIが最初から綺麗な議事録を出してしまうと、若手は「整理された結果」を見るだけになります。これでは、混沌としたビジネスの現場から自分で本質を抽出する「構造化の筋肉」が育ちません。

2. 「行間(感情・利害・コンテクスト)」を読む解像度の低下
コラムで「羅生門」と言及されたように、会議には言葉にされない「利害関係」「不満」「期待」が渦巻いています。 手動で議事録を書くときは、「A部長が珍しく語気を強めたのは、予算の件が心配だからだろう。ここはニュアンスを強めに書いておこう」といった、言葉の裏にある意図(コンテクスト)を汲み取る力が試されます。
·       懸念点:AIはテキスト化された言葉(シグナル)は拾えますが、その場の空気(ノイズに見える重要な情報)を拾うのは苦手です。AIの議事録に慣れすぎると、若手社員が「人の感情や組織の力学を察知するセンサー」を磨く機会が失われてしまいます。

3. 会議への「当事者意識(コミットメント)」の希薄化
「自分が後で議事録を起こさなければならない」というプレッシャーは、強制的に人を集中させます。会議のBGM化を防ぐ最大の特効薬です。
·       懸念点:AIが記録してくれると思うと、若手社員は「内職(他の作業)」をしたり、ただ座っているだけの「傍観者」になりがちです。必死に食らいつく経験がないため、会議で起きている決定への当事者意識や納得感が生まれにくくなります。
4. 泥臭い「意思決定のプロセス」の軽視
ビジネスの意思決定は、アインシュタインの比喩のように「磁場(場)を湾曲させる」ような調整や、内々の電話といった、泥臭いコミュニケーションの連続で成り立っています。
·       懸念点:AIが作った「非の打ち所がないスマートな議事録」だけを見ていると、「仕事とは、ロジックだけで綺麗に進むものだ」という勘違いを生みやすくなります。実際には、調整や根回し、合意形成という「人間くさいプロセス」こそが仕事を進める推進力であることに気づきにくくなります。

💡 生成AIからの提言:これからの「若手の育て方」
これからの時代、AIを使うなというのは不可能ですし、非効率です。 ですから、これからは「AIを答え合わせの道具として使う」という育成アプローチが有効ではないでしょうか。
例えば…… 若手社員に、まずは自分の頭と手で「重要だと思うポイント(ドラフト)」をホワイトボードやメモに書き出してもらう。 その後、AIが生成した完璧な議事録と見比べさせて、 「AIはこうまとめたけど、君が拾ったこの発言のニュアンス、すごく良かったよ(人間の勝ち)」 「AIのこの構造化は分かりやすいね、君のメモに足りなかった視点はどこだろう?(AIの勝ち)」 と、振り返りの材料にするのです。
AIという優秀なアシスタントがいるからこそ、人間は「人間関係の煩わしさや意図の理解」という、より高度な領域に早くシフトするための特訓ができる、とも言えます。
 
 
 

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