先日、経営のテーマに定めている “良い仕事をする人を増やす” について月例ミーティングで取り上げ、特に“良い仕事”とは何か?についてディスカッションを行いました。掲げている以上、メンバーでちゃんと議論しておこうとの思惑です。(どのような整理を行なったかは、HPリニューアル時にコンテンツへ反映させていただきます)
最近でこそ “良い仕事” というワード(近しい言葉群)を見聞きする機会が増えたように思うが、20年前にはどうでしょうか? あまり聞かれなかったのでは無いかと思います。
そもそも、昨今言われている意味合いとしての“働き方”などと言う概念が希薄だった高度成長の頃は、企業は収益を上げ納税し雇用を確保しておけば許され、働く側も給与が貰える会社に対してその労働や従属を提供するのが当たり前としていた時代、これを私は “所得は所属(組織への)” という様に捉え、企業(組織)に所属すること自体が目的化していた時代ではないかと。つまりは、より良い企業に所属する確率を高めるために優良と言われる学校へ進学し、そうして所属すれば 後は“勤め上げる”など、努めていた訳です。
そういう時代から80年代に入ると“企業の社会的責任(CSR)”が求められ、これに伴い“経営理念”を持たなければダメだということで経営理念の設定がブームにもなり、環境への責任、個人情報保護、就業の安全など他にも多岐にわたり社会的存在としての役割が広がってきている。
そうして今般、働き方も多様な時代へ移行し、多くの企業で副業兼業も認められるようになった。そうして今や、労働組合ではなく政府が経済界に賃上げを求める事が年中行事として定着するなど隔世の感があります。(なんだか、労働白書みたいな内容になってしまいました)
そうして、私自身の仕事経験の中で “良い仕事” を意図して仕事をする様になっていたのはいつ頃からだろうか?と考えた際、思いに至ったのは、テレマーケティング会社へ転職した20年くらい前、九州のある拠点にてコールセンターを一から構築〜拡大し400名を超える運用体制を整える中、当時の営業担当の役員に「半田さんがよく言う、良い仕事ってなんですか?」と真顔を問われたのを思い出します。私が言ったのは「テレマ事業は、結局のところ一人一人のオペレータさんが稼いでくれる利益から、各費用や我々幹部は給与を得ている訳で、一人一人の従業員の方に信頼して頂きここで働いていてもいいかな、と思ってもらう事を土台としている。クラインアントの多くは、お客様対応のサービスに対して対価を支払っているのであって、そのサービス原資の多くはオペレータ一人一人に帰属する。我々がマネジメントに尽くすべきは、その運用の仕組み作りと難易度の高いお客様サービスを習得するための環境作りや効果的な支援に他ならない、提案書に格好の良い事を書いても結局は様々な適性のオペレータさん達を一定水準のサービスが提供できる”良い仕事”をする人になって頂くことに尽きる。
だからこそ、マネジメントサイドは、意図的に“良い仕事”をする事を念頭に置くことが大事になる」と。
その当時丁度、ドラッカーのテクストを用いた研修をマネジメント層に行なっていたので、関連して引き合いに出し、
「つまりはドラッカーの言うところの“真摯さ”を意識して我々が仕事をしなければダメなんじゃないか」と。
そうして今日、当社が担う事業(仕事)は、なんらかの改善の為にこれを支援する事が中核になりますが、私共が大切にしたいのは、私共と仕事を進めていくプロセスや仕事の在り方自体に価値を感じで頂くことで、お客様の日頃の環境ではアンテナが立たないことや、アプローチの仕方、意図の持ち方などについて、少なからずのブレイクスルーが生まれて来なければダメなんじゃ無いかと思います。
その為に私共も、自らの仕事の仕方やチームワークの在り方について、“良い仕事”を念頭に振り返りと仕事の仕方の工夫を続ける事が、結局のところ大事になり、PageTurn(ページを開く)につながる。
余談になりますが、ドラッカーは著書 “マネジメント(エッセンシャル版)” にて「真摯さ」をマネジメントにおける重要な要素として提示していますが、「良い仕事」を措定する場合にも同様に大事なポイントになってくる。 「真摯さ」の記述をいくつか拾いますと・・・
【組織の精神】出典:PFドラッカー. マネジメント[エッセンシャル版]
「真摯さを絶対視して、初めてまともな組織といえる。それはまず、人事に関わる決定において象徴的に表れる。真摯さは、とってつけるわけにはいかない。すでに身につけていなければならない。ごまかしがきかない。ともに働く者、特に部下に対しては、真摯であるかどうかは二、三週間でわかる。無知や無能、態度の悪さや頼りなさには、寛大たりうる。だが、真摯さの欠如は許さない。決して許さない。彼らはそのような者をマネジャーに選ぶことを許さない。 真摯さの定義は難しい。だが、マネジャーとして失格とすべき真摯さの欠如を定義することは難しくない。」
もう一つ、
「真摯さよりも、頭のよさを重視する者をマネジャーに任命してはならない。そのような者は人として未熟であって、しかもその未熟さは通常なおらない。」
最初にドラッカーを読んだ時に、随分とすごい事を言う人だな、と戸惑いながら、「とてものこと私には及ばないけど、これを意図して自らを振り返る事ぐらいは出来そうだ」と受け止めましたが、これからも“良い仕事”へのキーワードとして捉えていきたいと思う今日この頃です。
※ 翻訳者の上田 惇生氏は “ integrity ” を「真摯(しんし)さ」と訳したが、調べてみると
“ integrity ” とは「誠実であること/強い道徳規範 など」とされている。
[2025/01/15 半田 延之]
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