top of page

急がば回れ

  • 執筆者の写真: TOMOKO TAKESHITA
    TOMOKO TAKESHITA
  • 3 日前
  • 読了時間: 5分

ree

AIは「親友」?

昨今の電通の調査によると、AIは「親友・母親並みの相談相手」だとか...。

おまけに、AIにあだ名までつけている人がいるとのこと。人は、「AIとは?」なんて言いながら、仲良くなるの、早いのなんの!

だって、転校生がクラスに来ても、こんなに早く「親友」にはなれないでしょう?


本当に終わりの見えないAI全盛時代、恐るべし、です。


ここ数年で、AIは目まぐるしいスピードで仕事のみならず、私たちの生活にあっという間に浸透してしまいました。そう、そこにあるのが当たり前になった印象です。


一方で「効率化」という旗印のもと、

会議の議事録作成、メールの草稿、プレゼン資料のアイデア出し...。

AIが「人間がやるべきこと」をどんどん肩代わりしてくれるおかげで、

私たちは「楽」になったものの、「自分で考える力」が衰えてしまわないか、

など、ふと立ち止まって考える瞬間も増えました。


自然知能という「オアシス」

さて、そんなAIサバイバル情報に脳が埋め尽くされつつあった先日、息子の通う学校の講演会に保護者の広報委員として参加させていただきました。

演題は、「答えのある問いから、答えがあるかどうかわからない問いへ」


「もう、なんでもかんでもAIで可能になっている(くる)!」と半ば諦めにも似た気持ちになりつつあった私にとって、

この講演はほっと一息のオアシスのような時間になりました。


講演では、世の中まだまだ未解明なことばかり!という、ある意味、当たり前のことに改めて気づかされました。そして、人工知能と相対する形で、自然知能の驚くべき特性に触れられました。


**人工知能のパラダイム**

人工知能は、デカルト的な発想。即ち「部品をつなげば動作する」という考え方。ゆえに、予測や動作を妨げる『ゆらぎ』や『ノイズ』は排除すべきもの」という、

極めて合理的・効率的な考え方です。


**自然知能のパラダイム**

一方、自然知能のモデルとして紹介されたのが「光合成」です。

葉の内部のタンパク質が微妙に揺れながら水を運び、部分と全体が混然一体となって、光エネルギーを利用し、二酸化炭素を水素イオンや電子、酸素を供給する。


この時、最も重要な働きをするのが、なんと「ゆらぎと遊び」なのだそうです。この「ゆらぎ」こそが、全体効率、すなわちパフォーマンスを最高に引き上げる本質なのだと。そして、「人間は理解できていません、造れません、真似できません」という講師の言葉に、写真撮影する仕事を忘れて、思わず「へぇ」と深くため息交じりの声が出てしまいました。


人工知能では排除されるべき「揺らぎ」や「遊び」が、万物の創造の礎だったとは...。

これまで「効率化の当たり前」として捉えていた、均質化、ノイズの排除といったものとはあまりに逆説的で予想外の印象を受けました。


ズレと「あそび」が育むもの

この講演を踏まえ、ふと足元に目をやると、私たちの「仕事」や「チーム活動」にも同じことが言えるような気がしました。

現在、私は保護者6名のチームで校内新聞の記事を作成しているのですが、これがなかなかまとまらないのです。


今回も試しに、講演のサマリーをAIに渡すと、それらしい...否、人間が考えるよりも最適な?記事をあっという間に作ってくれました。それなりな構成、それなりな文法。

しかし、いざ読んでみると、みんななんだか納得しないのです。


なぜか?そこには「6名のズレ」があるからです。


意味のズレ(言葉の定義や解釈の揺らぎ)や、コミットメントのズレ、その他、役割、責任の捉え方のズレなど、目には見えない、けれども結構なものが6人分横たわっています。


結果として、たった300字程度の原稿にも関わらず、AIの草案を基に、相当な時間をかけて、相当な回数のやり取りを重ね、、、そして、決定稿にはならず、翌日再検討ということに。しかし、一晩寝て、クリアな頭でそれぞれが再度読み返し、前夜の原稿とほとんど変わらない原稿で最終合意に至る、ということに相成りました。


やっている最中は、「なんでたったこれだけの記事に、こんなにエネルギーをかけるんだ?」と、正直、もやっとした気持ちになったけれど、無駄とも思えるプロセスを経た後には、皆が心から納得していることに気がつきました。


そして、何より有益だったのは、この一連の原稿作成&校正プロセスが、ただ記事を完成させただけでなく、メンバーの相互理解を促進し、リレーションの深さまでを変えていたことです。


「Aさんはユニークな視点で推敲できる」 「Bさんはボキャブラリーが豊かだ」「Cさんは先生とのリレーション構築に長けている」などなど、フィードバックが飛び交いました。


この「ズレを埋める時間」、すなわちチーム内での「ゆらぎと遊び」の時間が、チームの全体効率(パフォーマンス)を最高に高める土台を作ってくれたのです。


仕事の「遊びしろ」

人工知能は優秀です。記事のみならず、企画だって、戦略だって、私たち人間が求めた答えをわずかな時間でアウトプットしてくれることは火を見るより明らかです。

しかし、最終的に問われるのは、「その後」の私たちの仕事です。


AIが生み出した『最適と思われる答え』を前にして、私たちが心から「納得」しているのか?チームとして「腹落ち」して、そのアウトプットを『自分のもの』として実行できるのか?が、極めて重要になってくるのではないでしょうか。


AIの完璧なアウトプットに、あえて「遊びしろ(ゆらぎ)」や「人間の手ざわり」を加えること。そして、その「遊びしろ」を埋めるために、対話(ズレの解消)の時間を惜しまないこと。


これこそが、チームビルディング、顧客との関係構築、ひいては、新たな価値創造といった、他の業務や仕事全般に通底する、人間ならではの仕事ではないでしょうか。


AI時代だからこそ、私たちは、ノイズを排除するのではなく、ノイズを燃料にできる「自然知能」の力を信じて、非効率に見えるプロセスを大切にしていきたいものです。


さあ、今日はAIにどんな相談をしますか?そして、AIの回答を「誰と」共有しますか?

 
 
 

1件のコメント


りんりん
6時間前

仕事に寄せると、「ゆらぎ」を「ゆらぎ」として感じて受け入れることを経て、チームワークが育まれるようなイメージが浮かびます。

いいね!

PageTurn 2025

bottom of page